ユーコン川をカヌーで下る⑨ 30マイルズリバー(7月20日)

  • レイクラバージュの流れ出しからは美しい川が続く
  • 初めてのフライフィッシングでグレイリングが釣れた
  • バナナにチョコを挟んで焼く!最高に美味しい野外料理
パトック?の作り方

朝までぐっすり眠れた。孤独にクマに耐えた前日とは違い、隣に人がいるのは心強かった。

朝食に僕はフランスパンをかじった。ウルフガングとマリアンは小麦粉をこねてパンのようなものを作っていた。僕のメモでは「パトック」か「パメック」と書いてあるが、正しくはわかならい。作り方はこうだ。

【材料】3カップの小麦粉、塩少々、大きいスプーン2杯のベーキングパウダー、水2カップ

【作り方】材料を混ぜて、油かラードで焼く。

ウルフガングが僕に釣り糸の結び方を聞いてきた。今ままで適当にやっていたらしい。

「釣りはユーコンでしかしないんだ。オーストリアでは1時間待っても釣れないけど、ここに来たら一投ごとくらいのペースで釣れるものね」

MILES RIVER

のんびり準備して出発。1時間ほど漕ぐと湖の端にたどり着いた。

全長50キロの大きな湖なのに、流れ出しは驚くほど小さい。

レイクラバージュ流れ出し(写真)

ここからの澄んだ川が流れる美しい区間が「30 MILES RIVER」と呼ばれる。

レイクラバージュで同じ景色に見飽きていた分、川が流れて、次々と変わる景色に心が躍った。

朝は雨が降っていたが太陽の光も差した。

川岸にいたウルフとマリアンが「もう2匹釣ったよ!」と大声で叫んだ。

え、こんな場所でも釣れるの?。そこは2メートルほどの水深で流れはあるが、瀬や渦などの変化には乏しい場所なのだ。やはり魚影はとても濃いらしい。

USベンド近くでキャンプ

午後の早い時間にキャンプ地に到着。USベンドを超えてすぐの場所で、中洲が小島になっている。ベンチと机があった。

少しして、ウルフとマリアンがやってきた。キャンプ地を観察し「ここでキャンプをしてもいいか」と聞いてきた。彼が許可を求めてきたのは、前日こんな会話をしていたからだ。
「タクはなんでユーコンに来たの?」
「うーん、そうだね。1人になって厳しい場所に身を置いて、いろいろ考えたかったかな」
だからウルフは気を使ってくれたのだった。
「大丈夫だよ。1人になれる日なんて、これからいくらでもあるさ」

グレイリングを釣る

ここは野田さんが「ユーコンを筏で下る」の中で「魚がよく釣れるキャンプ地」として紹介していた場所だ。初めてのフライフィッシングを練習する場にはぴったりではないかと思った。

テントを設営して釣りへ。この小島では右側が水深が深い本流で、左側が浅い支流になっていた。僕は左側を選んだ。

写真は釣り場。

高校1年の時に映画リバーランズスルーイットでフライフィッシングを見て、こんなに美しい釣りがあるのかと思った。
その”a river runs through it”(川がそこに流れている)というタイトルも「それ以上の意味は自分で考えなさい」と語りかられているようでよかった。僕はその後、川の学校で子どもにメッセージを書くとき、必ずその”a river runs through it”と書くようになった。

ずっとフライをやってみたかったが、普通の釣具屋で道具を扱っておらず、敷居が高くて踏み出せていなかった。今回、フライ好きの店長がいる「いはら釣具本店」で道具を揃えることができた。店長は駐車場でキャスティングまで教えてくれた。

ちなみに店長は、僕が「カナダに行くのでフライの道具を揃えたい」とお願いした時、「経験がないので対応できないと思います…」と言っていた。でっかいサーモンなどを釣るのかと思ったらしい。そうではないと説明し、「その後ニュージーランドにも行くので、ニジマスを釣るくらいのタックルをください」と言ってそろえてもらった。すみません店長、カナダくんだりまでやって来て、釣ったのはグレイリングという変な魚です。

さて、実釣。まずは瀬を流す。すぐに流れていってしまった。もう1投。あたりはない。

確か店長は「通常、フライは自分より下流側で釣る」と言っていた。ポイントは瀬が終わるあたりだろうと読んだ。

瀬が流れ切ったあたりを漂わせていると、ラインが走り出した。柔らかいロッドが曲がり、指で押さえたラインが引き出される。リールのドラグに頼らないやりとり。これがフライの醍醐味か。

30センチ弱の綺麗なグレイリングだった。
結局、ここでグレイリングを計3匹を釣った。

「日本人なんだから魚料理は得意でしょ?」

夕食はマリアンがカレーを作ってくれると言った。
「昨日から食べさせてもらってばかりで申し訳ない。何か作るよ」と申し出ると、魚料理をリクエストされた。「日本人なんだから得意でしょ」

レパートリーもそれほどないので、釣ったグレイリングを三枚におろし、塩胡椒と混ぜた小麦粉をまぶして油で揚げてフライにした。これに「日本人は何にでもこれをかけるんだ」と説明して醤油をかけた。2人の感想は”Interesting”。
「口に合わなかった?」「良い”interesting”よ」とのことで、最後まできれいに食べてくれた。

僕がたった1品のフィッシュフライを作る間に、マリアンは数種の野菜を刻んで炒め、カレー粉やスキムミルクを混ぜ、米を炊いてカレーライスを作り上げていた。
彼女はキャンプにいろいろな材料をバランスよく持ってきているようだった。「こんな荒野でよくこれほどの料理が作れるね」と感心すると「ピザでも作れるわよ」と言う。包み焼きの形にし、熾火の中で焼き上げるのだと言う。
ラーメン、パスタとドライフルーツで乗り切ろうとしていた僕には衝撃的だった。

技術と工夫で荒野のキャンプは楽しくなる

またウルフはかまどの両脇にはY字の柱を二本立てて横に棒を渡し、レ字の型のフックを作って鍋を吊した。外国のキャンプの写真で見たことがあるが、実際にやっているのを見たのは初めてだ。そしてこれが料理を飛躍的にやりやすくしていた。

ちなみに2人は調理用のコンロを持ってきていなかった。たとえ雨でも焚き火で調理するのだという。「どんな時でも火を起こす方法を知っているからね。」
これはもしかすると、トラッカースクールで学んだことなのかもしれない。

ちなみにこの2人、彼氏と彼女ではないと言うことが分かった。一緒のテントだったからそうだと思い込んでいたが、お互い「ベストフレンドの一人」なのだと言う。ウルフはオーストリアに彼女がいて、この旅が終わるころにカナダに来るらしい。もう一度この川を降ろうかな、と言う。

最後にウルフはバナナチョコレートをデザートに作ってくれた。皮がついたままのバナナに切れ目を入れ、チョコレートを挟んで焚き火の上へ。チョコが溶けたら出来上がり。ほんのすこしの工夫でなんと美味なことか!

同じ荒野でも、知識と技術で楽しめるレベルがこれほどまでに変わってくるのか。最近のキャンプで最大級の気づきだった。

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