#6 Inangahua river ブラウントラウトを釣る

【パックラフトと巡るニュージーランド】

今回は川を下っていない。
釣りと、シュノーケルをつけて川に潜った話だ。

僕はパックラフトに釣り道具やシュノーケルを積んで、魚と触れ合いながら川を下る予定だった。
しかしである。なかなかそうはいかなかった。

まず、パックラフトは軽いとはいえ、パドルやライジャケなど道具一式はそこそこの重さと容量になる。釣り道具は荷物から削ることが多かった。

全回のタラマカウ川にはフライを持っていったが技術が追いつかなかった。フライの道具は昨年、ユーコンに行くのに合わせて新調したものだ。カナダではグレイリングが気持ちよく釣れたが、それ以来何の練習もしていなかった。キャスティングもままならない。

そしてシュノーケル。水中で魚を追いかけ回したい。「人目につかないところだったら突いてやろうか」くらいに思っていた。だけれど川下り中に水に潜って、その後また川を下るなどという気持ちは消え失せていた。だってニュージーランドの川、とても寒いんだもの。

とはいえ、魚とりやシュノーケリングはモンベルさんに説明した旅の内容に入れていた。その理由について自分氏は「それは川の豊かさ、親しみやすさを測るのに最も適した方法の一つではないかと思う」と、たいそうに語っていたのである。

トラウトがルアーを追う

というわけで、パックラフトとは一度切り離し、釣りとシュノーケルで川を探索していた。場所は南島西側の内陸部にあるイナンガファ川である。金鉱の街として栄えた歴史ある小さな街で、付近は大型のトラウトの実績も高い。

街の釣具屋のおばさんが写真を見せてくれた。「このブラウントラウトはネズミを7匹、これは10匹も飲み込んでいたのよ」。腹を裂かれた大きなブラウンの前に胃袋から出て来たネズミが並べられた写真であった。

よく晴れた昼下がり、体を沢登り装備、頭は偏光グラスと帽子で固め、キャンプ場の裏から川に出た。道具は今回はフライではなくルアー。小学5年生の時に父親に買ってもらった古い古い釣竿だ。しかし振り出し式のため持ち運びが容易で、短くて取り回しも良いため、今でも海でカサゴを釣る時などに使っている。

川幅は狭いところで10mあるかないか。
瀬の上のなだらかな水深30センチほどの浅場をスピナーを通した。
魚が追いかけているのが食わない。

食わせるための間が必要なのかもしれない。ミノーに変えてトィッチしてみると掛かった。トラウトが水面から跳ね上がり、水しぶきをあげた。うわ、きれい!何この感動!
しかしそのまま針が外れてしまう。

2匹目もバラし、相変わらず下手くそだな自分はと肩を落としたが、魚は何度でも追ってきた。3回目でついにランディングできた。
灰色がかった魚体に大きな黒や赤の斑点。これがブラウントラウトというやつだ。

結局1時間と少しで5匹を釣り、2匹を確保した後で、水中を観察することにした。シュノーケルをつけて、川を上流から下流に流れる。

水質的に、青みがかった透明な他の川と比べると、あまりきれいな川ではないようだ。藻の破片だろうか。細かなものが水中を漂って視界を短くしていた。たまにブラントラウトが泳いでいるのが見える。しかし他の小さな魚などは見当たらなかった。

魚種の豊富さで言えば、徳島の川とは比べものにならないくらい少ない。そもそも、ブラウントラウトは外来種だ。ニュージーランド固有の淡水魚とはどんなものがいるのだろう。

ブラウンさんの見た目

ブラウントラウトが美味しそうに見えたかというと、微妙なところである。
他のトラウト一族と比較してみよう。

僕は世界で一番美しいと思っている魚はアメゴ(アマゴのことだが徳島県ではそう呼ばれる)だ。肌の輝き、艶やかさ、凛とした表情。その全てが繊細だ。美味しくなさそうな要素が見当たらない。塩焼きなどはたまらない。

イワナはアマゴに比べて表情がいかつく、見た目もきらびやかさに欠ける。しかし落ち着いた色彩の模様とつるりとした肌には渓流で育ちの生命力が感じられる。

ではブラウントラウトはどうだろう。黒の斑点は一つ一つが大きくまばらで、鱗も一つ一つが大きく見える。なんというか大雑把な印象だ。色も薄く、白光りしている印象でなんというか、大雑把な印象だ。

おっと、見た目で中身を論じるのはブラウンさんが可哀想だ。いただいた命、大切に味あわせていただきます。

一夜干しを作る

料理の方法に選んだのは一夜干しだ。僕は日本でオイカワ、カワムツ、ヨシノボリなど、様々な川魚を食べてきた。これらを美味しくいただくのに必要なのは、水分をきちんと抜くことだ。だいたいは唐揚げでいただくが、油を高温にしすぎず、きっちりと水分を蒸発させるのが大切だ。それでうまみも香りもしっかりと感じられる。生臭さも水分と一緒に抜けると思っている。

ブラウントラウトにも臭みがあることが想像されたので、背開きにした後、塩をして30分ほど置き、水分を抜いた。そしてキッチンペーパーに挟み、キャンプ場のキッチンの冷蔵庫へ。一晩おいた。

ブラウントラウトのお味は?

翌朝、ブラウンの水分はいい具合に抜け、プリプリとした美味しそうな一夜干しになっていた。
フライパンで皮目から焼く。川は皮から海は身から。それではいただきます。

一口食べた時にすぐに気がついた。特有の匂いがある。気のせいかと思い、次の一口も慎重に味わったが、やはり泥臭い。うーむ。

結局残った身はよく炒め、オイスターソース、ごま油などと混ぜて油そばの具とした。濃い味付けが泥臭さだけを隠して、魚の味もしっかり出たのでそれは良かったと思う。

胃袋の中から出てきたのは

確かに、ブラウントラウトがあまり美味しくないという予感は、前日からしていたのであった。
まず胃袋の中身を見た時に、タニシのような形の小さな貝と、植物の茎のような黒い物体がたくさん出てきていたのだった。少なくとも、苔と一緒に底生生物を食べているようだった。良質な苔を食べた鮎は良い香りをまとうと言うが、この川の苔は….水中に潜った感想で言うとあまり美味しそうではない。

うーむ、ブラウンさんは微妙であった。まだ見ぬレインボーはどうなのか。食べてみたいなあ。

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