#4 Tasman Lake 氷山を見にいった

【パックラフトと巡るニュージーランド】
荒れ狂う氷河の川(戦略的撤退!)

当初、この旅の趣旨はニュージーランドの川を下ることだった。しかし、今回は湖である。経緯はこうだ。

タスマン湖はニュージーランドの最高峰マウントクック近くにあるタスマン氷河を水源とする湖だ。湖には多数の氷山が浮いている。

当初、このタスマン湖から流れ出るタスマン川を下れないかと考えていた。この川は約30キロでプカキ湖に至る。プカキ湖は絵の具を溶かしたような濁った水色が特徴で、晴れた日にはそれは美しい。

いい写真を撮っていなくて残念。だけどこれがプカキ湖

さて、その変化に富んだ川を下れないかとベースとなるマウントクック・ビレッジを目指したのだが、到着の前日は”Unuseual”な(昨年のユーコン以来この単語を何度聞いただろうか)冷え込みにより、ビレッジの数百メートル上が雪化粧した。

山に新雪

そして湖から流れ出るのは氷山が浮かぶような凍てついた水である。「沈などは勘弁願いたい」と思いながらタスマン川を下見したのだが、これが予想を超える激流だった。

写真ではわかりにくいかもしれないが、この波、一撃食らえば確実に川の藻屑とされてしまうサイズである。パックラフトサイズではなく、6人乗りのラフトサイズである。(Googleアースによる目測であるが、湖からしばらくはこのような瀬がいくつもあるようだ)

そして水は10センチ先も見えないほど濁っている。フットエントラップメントさん(石の間に足が挟まり水圧で動けなくなる)、いらっしゃいである。

少なくとも一人で降るような川ではない。ここは戦略的撤退である。タスマン湖の氷山鑑賞パックラフティングに変更!

氷山の90%は水の中

翌日、パックラフトを担いで湖のほとりにやってきた。駐車場から歩いて15分ほどの場所で、氷河鑑賞ボートの発着点にもなっている。カヤックのツアーもある。

空気を膨らませていると、ライフジャケットを着たボート会社の男性がやってきた。「氷山の90%は水の中だということを思い出してね。隠れている氷にぶつかれば簡単にひっくり返るよ。それと氷河はとても脆い。あまり近づきすぎないようにするのがいいね」。

浮いている氷山は数えるほどだった。時期によってはもっと多くが浮いているようだ。しかし、地球温暖化の影響で氷河は衰退していると、後に出会った大学院生が教えてくれた。(彼女は地球温暖化がこの地域の観光に与える影響を調査していた)

氷山は大部分が泥で汚れているが、所々深い水色に輝いていて美しかった。予想通り、水はキンキンに冷たかった。

この日は風が強かった。向かい風になると、軽くてその割に体積が大きいパックラフトはほとんど進まない。静水にパックラフトは向いていない、とつくづく思う。故にスプレーデッキやセルフベイラーが付いていないパックラフト(つまりこのジャグジー号)は、最大限に活躍する環境がとても限られていると思う。

タスマン湖と地球温暖化について

ここからはこの記事を書くにあたって調べた内容である。

タスマン氷河に減少については、憂慮する科学者同盟(The Union of Concerned Scientists )のウェブサイト:Climate Hot Mapにわかりやすくまとめられていた。こちら

要約はこうである。

・ニュージーランド最大、最長の氷河は20世紀後半に急速に衰退し、新しい湖を形成した(すなわちタスマン湖である)

・科学者は少しの気温上昇でもニュージーランドの氷河は縮小し、タスマン氷河は消滅してしまうと推測している。

僕が漕いでいた湖は、地球温暖化によって出現したものだった。これほどまでに地球温暖化の影響を肌で触れたことはなかった。

氷河の溶解によって急速に拡大した湖とそこから流れ出る川。それは恐ろしく不安定な状態にあるに違いない。川を下らなくてよかったとしみじみと思った。

タスマン湖と気候変動

後に調べてわかったことだが、このタスマン湖は30年ほど前には存在しなかったという。

例えば、マッセイ大学ウェブサイトの2008年のリポートでは、研究者の話として「1973年には湖は存在しなかった」と説明。また昨年のティマル・ヘラルドの記事では、同地域で45年の経験を持つパイロットが「1980年代には湖はなかった」と証言している。後者の記事では2009年から16年の間に、湖がどれくらい拡大したかを写真で表しているのでわかりやすい。

国際NGO「憂慮する科学者同盟」は運営するウェブサイト「Climate Hot Change」において、ニュージーランドの氷河はほんの少しの気温上昇でも著しく減少すると指摘。タスマン氷河については、消滅する可能性があると警告している。

 

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