最大限減量したのに…..
「わお、荷物多いのね。いくらかはカヤックの上に置くことになりそうね」
カヌーピープルの受付の女性は僕の荷物を見てこういった。
荷物が多い?あれだけ減らしたのに?
僕の荷物は関西国際空港での軽量で16.5キログラム(デジタル機器満載のバックパックは除く)。それにホワイトホースで買った食料があるので、総量では25キログラムくらいだろうか。
僕に与えられたのはBoreal designのEpsilonというカヤック。
他のカヤックに比べてもボリュームが少なめ(といっても大差ないが)で、3つのハッチがついている。
ハッチがついたカヤックは初めてだった。3つのハッチは入り口が大、中、小とそれぞれ大きさが違う。
特に2つは小さい。大きくて20リットルくらいの荷物しか入らない。
故に、シングルカヤックの旅では、20リットルくらいまでの防水バッグに荷物を小分けするのがいい。
スタート地点のジョンソンズクロッシングで荷物を再分類し、小さな防水バッグや、濡れても良いものはただのスタッフサックに詰め直した。
入らないものはデックやバウ(ようするに船の上)のバンジーコードに挟んだ。
それでなんとか収まった。
ラダーは使うの?
もう一つ初めてだったのが「ラダー」。
これは船尾に着いた舵で、コクピット後ろのコードで出したり収納したりできる。
船内にペダルがあり、それを踏めば舵が取れる。
これはとても便利だった。
というのも、カヤックは直進性がものすごく強く、しかも荷物満載で重いため、パドルでの舵が効きにくい。ペダルを踏むと簡単に曲がるラダーはありがたかった。
ただ、やはりラダーを出すとスピードは少し落ちる気がした。
「ラダーは使っている?」
高校生グループのガイド・ティモシーに聞いてみると、彼は使っているということだった。
確かに船足は落ちるけれど、細かく蛇行するよりはまっすぐ進む方が効率がいい。狭い船内で足も動かせるし。とのこと。
筋肉や筋にかかる負担について
昨年、シングルパドルのカヌーでユーコンを降った時には、颯爽と進むダブルパドルのカヤックを見て「なんて効率的なんだ!」と思った。
カヤックの方が細身でスピードが早く、ブレードが2つある分、次のストロークに移るまでの動作が速い。荷物を軽くせざるを得ないのも一因かも。
ただし、長期にわたるカヤッキングが体に与える負担は、カヌーに比べても大きいものだった。
特に私は1年以上なりを潜めていた手の痺れ「手根管症候群」が再発。
4日目にひどくなり、残りの3日間手の甲を下に向けた変則的なパドリングを余儀なくされた。
昨年は週間のパドリングでも体を痛めるということはなかった。
単純にシングルパドルとダブルパドルを比較すると、シングルでは2本の腕で1本のブレードを扱うが、ダブルは2本の腕で2本のブレードを扱うわけであるから、腕1本の負担は倍になる。
また漕いでいない側のパドルを持ち上げる動作は腕1本で行う。この動作は着実に体にダメージを与えていると感じた。
手の痺れと格闘しながら、そんなことを考えた。
ただ、手の甲を下に向けて漕いでも、慣れればそれなりに大丈夫なものだな、というのも発見だった。